タイルと左官の問題は、工法の名前と「どこにモルタルを塗るか」の対応を押さえれば、半分以上が解けます。 数値は国土交通省の公共建築工事標準仕様書(建築工事編)令和7年版(以下「標仕」)の11章・15章で確かめたものです。

タイル工事に共通する条件(標仕11.1)

  • 外装タイル張りは、降雨・降雪・強風が予想されるときは施工しない
  • 施工中や施工後の気温が 5℃以下になると予想されるときは、原則として施工しない
  • 張る前に、下地モルタルに硬化不良・浮き・ひび割れがないか、レイタンスなどの付着物がないかを確かめる
  • 伸縮調整目地は、下地のひび割れ誘発目地・打継ぎ目地・構造スリットの位置に合わせ、躯体と縁を切って設ける

セメントモルタルによる壁タイル張りの4工法

工法 モルタルを塗る場所 張り方 張付けモルタルの塗厚(総厚)
密着張り 下地側 タイルを押し当て、**タイル張り用振動機(ヴィブラート)**で振動を与えて張る 5〜8mm
改良圧着張り 下地側とタイル側の両方 タイル裏面にもモルタルを塗り、たたき締める 下地側4〜6mm、タイル側1〜3mm
マスク張り タイル側(ユニット裏面にマスクを当てて塗る) 直ちに張り、たたき締める 4mm
モザイクタイル張り 下地側 ユニットタイルを張り、目地部分にモルタルが盛り上がるまでたたき締める 3〜5mm

「改良圧着は両面、マスクはタイル側」がいちばんの区別点です。 下地側に塗る工法は、モルタルが乾いてしまうと付着が落ちるので、1回に塗る面積に上限があります。

1回の塗付け面積の限度

工法 限度
密着張り・改良圧着張り 触れると手に付く状態のまま張り終えられる範囲で、2m²/人以内
モザイクタイル張り 同じく、3m²/人以内

また、モルタルは原則として機械練りとし、1回の練混ぜ量は60分以内に張り終える量とします(標仕11.2.5)。

張付けの順序と目地

  • 張付けは、目地割りに基づいて水糸を引き通し、窓・出入口回り・隅・角などの役物を先に張る
  • 下地側の張付けモルタルは 2層に分けて塗り、1層目はこて圧をかけて塗る
  • 密着張りの目地詰めは、張付け後24時間以上経ち、モルタルの硬化を見計らってから行う
  • 目地の深さは、タイル厚さの1/2以下
  • 伸縮調整目地にはみ出した張付けモルタルは、すべて削り落とす

床タイル張り

  • 張付けモルタルは2層に塗り、合計の塗厚はユニットタイル3〜5mm、その他のタイル5〜7mm
  • 床の伸縮調整目地は、縦・横とも4m以内ごと(防水層の保護コンクリートの上は3m程度)
  • 床タイル張り後 3日間は歩行しない(やむを得ないときは道板で養生)

有機系接着剤によるタイル張り(標仕11.3)

  • 下地面は十分に乾燥させる。水湿しや吸水調整材の塗布はしない(セメントモルタル張りとの違い)
  • 接着剤は金ごてで平らに塗り、くし目ごてを壁面に60°の角度に保ってくし目を立てる
  • 裏あしのあるタイルは、裏あしの方向とくし目の方向を平行にしない

施工後の検査(標仕11.1.7)

検査 対象と方法
外観 色調・不陸・割れ・目地幅の不ぞろいなどを目視で確認
打診 屋外や屋内の吹抜け部分のタイル張りは、モルタル・接着剤の硬化後に全面を打診。浮きがあれば張り直す
引張接着試験 屋外・吹抜け部分の壁タイル張り。試験体は目地部分をコンクリート面まで切断して周囲と絶縁し、100m²ごと及びその端数につき1個以上、かつ全体で3個以上

セメントモルタルによるタイル張りの合格基準は、引張接着強度 0.4N/mm²以上、かつコンクリート下地の接着界面での破壊率が 50%以下です。

左官工事(標仕15章)

共通の条件

  • 気温が 5℃以下のときは施工しない(やむを得ないときは、シート掛けや採暖をする)
  • 急激な乾燥を防ぐため、シート掛けや水湿しをする
  • 打継ぎ部や開口部回りなど、ひび割れのおそれのある箇所には、モルタル塗りの場合はメタルラス張りなどを行う

セメントモルタル塗り(標仕15.3)

項目 標仕の値
1回の塗厚 7mm以下(床を除く)
仕上げ厚または全塗厚 25mm以下(床を除く。タイル張りは張付けモルタルを含む)
防水下地の床・立上りの塗厚 15mm以上
下地の補修後、下塗り後の放置期間 14日以上(接着が確保できるなら短縮可)
砂の塩分含有量 NaCl換算で0.04%以下

工程は下塗り → (むら直し) → 中塗り → 上塗りの順です。要点は次のとおりです。

  • 吸水調整材を塗ってから塗り付ける(下地がモルタルの水を吸いすぎるのを防ぐ)
  • 下塗り面は金ぐしで荒らし目をつけ、次の層の付着をよくする
  • 下塗りは14日以上放置してひび割れを出し切ってから次を塗る。ひび割れを上の層に持ち込まないため
  • 下の層ほど富調合(セメントが多い)、上の層ほど貧調合にする(例:コンクリート外壁の下塗りはセメント1:砂2.5、中塗り・上塗りは1:3)。上の層を強くしすぎると、収縮で下の層からはがれる

仕上げの種類

仕上げ 使う下地
金ごて 塗装下地、壁紙張り下地、防水下地、壁タイル接着剤張り下地
木ごて セメントモルタル張りのタイル下地

モルタルでタイルを張る下地は、付着をよくするためにざらつかせる(木ごて)、接着剤や塗装はなめらかな面が要る(金ごて)、という理屈です。

セルフレベリング材塗り(標仕15.5)

  • 流し込むだけで平らになる床下地材。標準の塗厚は 10mm程度
  • 下地に吸水調整材を2回塗り、乾燥させてから流す
  • 硬化するまでは窓や開口部をふさぐ(風で表面が乱れ、急に乾くのを防ぐ)。その後は自然乾燥
  • 養生期間は 7日以上(低温なら14日以上)

覚え方のコツ

  • 工法は「密着はヴィブラート、改良圧着は両面、マスクはタイル側、モザイクは盛り上がるまで」
  • 面積は「2m²、モザイクだけ3m²」、練混ぜは「60分で張り切る量」
  • 検査は「全面打診、引張は100m²に1個・最低3個・0.4N/mm²」
  • 左官は「1回7mm、全部で25mm、放置14日」、調合は「下ほど濃い」
  • 仕上げは「タイル(モルタル張り)の下は木ごて、あとは金ごて」

タイルと左官は、手順の「前後」と「どちら側に塗るか」を入れ替えた誤りが典型です。 工法名を見たら、まずモルタルの位置を思い浮かべる習慣をつけましょう。