構造の問題は、「その部材は何の力を受け持っているか」を考えれば、ほとんど理屈で解けます。 この記事では、鉄筋コンクリート造(RC造)と鉄骨造(S造)の仕組みを整理し、 最後に建築基準法施行令の数値を表にまとめます(2026年1月1日時点の条文で確認)。
鉄筋コンクリート造(RC造)
役割分担がすべて
| 材料 | 得意 | 苦手 | RC造での役割 |
|---|---|---|---|
| コンクリート | 圧縮 | 引張(引張強度は圧縮強度に比べてはるかに小さい) | 圧縮を受け持つ、鉄筋を錆から守る、耐火性を与える |
| 鉄筋 | 引張 | 火熱、錆 | 引張を受け持つ |
2つの材料が一体で働けるのは、次の理由からです。
- 熱膨張係数がほぼ等しいので、温度が変わってもずれない
- コンクリートはアルカリ性で、中の鉄筋を錆から守る(中性化が進むと錆びやすくなる)
- 異形鉄筋の節で付着し、力を伝え合う
部材ごとの鉄筋
| 部材 | 鉄筋 | 役割 |
|---|---|---|
| 柱 | 主筋 | 曲げによる引張を受け持つ |
| 柱 | 帯筋(フープ) | せん断力を受け持ち、主筋の座屈とコンクリートのはらみ出しを防ぐ |
| 梁 | 主筋(上端筋・下端筋) | 曲げによる引張を受け持つ |
| 梁 | あばら筋(スターラップ) | せん断力を受け持つ |
| 床・壁 | 縦横の鉄筋 | ひび割れを抑え、力を分散する |
「帯筋・あばら筋はせん断補強筋」と覚えるのが最優先です。 主筋を増やしてもせん断には効きません。
構造上の注意点
- **短柱(腰壁・垂れ壁で柱の動ける長さが短くなった柱)**は、地震のときにせん断力が集中し、脆いせん断破壊を起こしやすい。柱と壁の間にスリットを設けて防ぐ
- 耐震壁は水平力に対して非常に硬い。平面上・立面上で釣合いよく配置しないと、ねじれや特定階への被害集中が起こる
- 梁の貫通孔は、せん断力の大きい端部を避け、孔の周囲を補強する
- かぶり厚さは、鉄筋を錆と火から守る厚さ。土に接する部分ほど大きくする
鉄骨造(S造)
鋼材の性質
- 強度が高く、粘り(靭性)があるので、大スパン・高層に向く
- 部材が細く薄くなるため、座屈(圧縮で急に横へはらみ出す現象)に注意が要る
- 燃えないが、高温で強度が大きく下がるので、耐火被覆が必要
- 錆びるので、防錆処理が必要
H形鋼の見方
| 部分 | 主に受け持つ力 |
|---|---|
| フランジ(上下の板) | 曲げモーメント |
| ウェブ(中央の板) | せん断力 |
梁の曲げは上下の縁ほど大きな力になるので、材料を上下に離して置くH形が効率的なのです。
座屈と細長比
圧縮材は、細長いほど座屈しやすい。 その細長さの指標が細長比(座屈長さ ÷ 断面二次半径)で、大きいほど座屈しやすくなります。 座屈長さは、材の端の条件で変わり、端の拘束が強いほど短くなって座屈しにくくなります。
接合
| 接合 | 仕組み |
|---|---|
| 高力ボルト摩擦接合 | 高い張力で締め付け、接合面の摩擦力で力を伝える。摩擦面の処理(すべり係数の確保)が重要 |
| 溶接接合 | 突合せ溶接(完全溶込み溶接)、隅肉溶接など。部材を一体化する |
| 普通ボルト接合 | 小規模な建築物に限って、戻り止めの措置をして使える |
柱と梁の接合部では、梁のフランジの力を柱に伝えるため、柱の中にダイアフラムという板を入れます。 ウェブの座屈を防ぐ補強板はスチフナーです。
建築基準法施行令の数値
| 項目 | 数値 | 根拠 |
|---|---|---|
| RC柱の主筋 | 4本以上 | 施行令77条1号 |
| RC柱の帯筋 | 径 6mm以上、間隔 15cm以下(梁・壁から上下に柱の小径の2倍以内の部分は 10cm以下)、かつ最も細い主筋の径の15倍以下 | 77条3号 |
| RC柱の帯筋比 | 0.2%以上 | 77条4号 |
| RC柱の小径 | 構造耐力上主要な支点間の距離の 1/15以上(構造計算で安全を確かめた場合を除く) | 77条5号 |
| RC柱の主筋の断面積 | コンクリートの断面積の 0.8%以上 | 77条6号 |
| RC床版の厚さ | 8cm以上、かつ短辺方向の有効張り間長さの 1/40以上 | 77条の2 |
| RC梁 | 複筋梁、あばら筋の間隔は梁の丈の 3/4以下 | 78条 |
| RC耐力壁の厚さ | 12cm以上 | 78条の2 |
| 鉄筋のかぶり厚さ | 耐力壁以外の壁・床 2cm以上、耐力壁・柱・梁 3cm以上、土に接する壁・柱・床・梁・布基礎の立上り 4cm以上、基礎 6cm以上(捨コンクリートを除く) | 79条 |
| コンクリートの4週圧縮強度 | 12N/mm²以上(軽量骨材は9N/mm²以上) | 74条 |
| 鋼材の圧縮材の有効細長比 | 柱 200以下、柱以外 250以下 | 65条 |
| 高力ボルト等の中心距離 | 径の 2.5倍以上 | 68条1項 |
| 高力ボルト孔の径 | ボルト径 +2mm以下(径27mm以上で構造耐力上支障がなければ+3mmまで) | 68条2項 |
| ボルト孔の径 | ボルト径 +1mm以下(径20mm以上で支障がなければ+1.5mmまで) | 68条4項 |
覚え方のコツ
- 「コンクリートは押す、鉄筋は引く、帯筋とあばら筋はずれ(せん断)を止める」
- H形鋼は「フランジで曲げ、ウェブでせん断」
- 座屈は「細長いほど起こる、端を固めるほど起きにくい」
- かぶり厚さは「2・3・4・6」(床と壁 → 柱・梁・耐力壁 → 土に接する → 基礎)
- 柱の帯筋は「6mm・15cm・10cm」、柱の主筋は「4本・0.8%」
構造の選択肢は、「〜ほど大きくなる/小さくなる」の向きを入れ替えた誤りが多く出ます。 部材が受け持つ力の絵を思い浮かべて、向きが合っているかを確かめる習慣をつけましょう。